版画の楽しみ!

版画とは?

現在、版画は美術の様々なジャンルの中で、人々からいちばん親しまれており、現代美術における最も先鋭的な表現の担い手としての広がりをみせています。

 版画の歴史は古く、印刷術の発明発展にともなって始まっています。ありていえに言えば、版画は印刷された絵画であり、版(プレート)を用いて刷るという行為を通して複数制作が可能な絵画的表現といえます。
版画は完成した絵画を印刷したものではなく、手描きでは不可能な「版」独自の表現(版の機能と効果)を求めて、オリジナルな作品を制作するものです。だから複数の印刷とは決定的な相違があります。

版画の始まり。

版画の国「日本」。大胆なフォルムと鮮やかな色彩の浮世絵が、日本に憧れたゴッホを始めとする多くの印象派に影響を与えたことは有名です。

日本の版画

 日本の多色刷り木版画、いわゆる錦絵は(江戸時代)1765年に鈴木春信によって創始され、浮世絵の全盛期を迎えました。鳥居清長、喜多川歌麿らの美人画、謎の浮世絵師といわれる東洲斎写楽は主観的に対象を誇張した独特の役者絵を短期間に集中的に発表しました。そして19世紀の前半になると葛飾北斎が迫力と近代的な造形性をもつ風景画を完成させ、つづいて安藤広重が日本的な自然と旅情を版画にしています。また、幕末の歌川国芳の怪奇と幻想が注目を集めています。これらの浮世絵版画は19世紀半ばからヨーロッパ、とくにフランスに知られ印象は、後期印象派の画家達に影響を与えたことで有名です。

 最も歴史の古いのは木版画です。発祥地の中国では9世紀の経文の扉絵が残っています。木版画に必要な木はどこにでもありますが、肝心の紙が最初に発明されたのは中国の2世紀初めであり、墨も同じ頃なので実際に木版画が始まったのはかなり早かったのでしょう。

 日本に製紙法が伝えられたのは7世紀で現存する最古の木版画は11世紀の仏像です。中国から西方に伝えられた製紙法がヨーロッパへ及んだのは13〜14世紀のこと。15世紀初期の聖母像の木版画が知られています。

 16世紀にはドイツ・ルネサンスの二大巨匠、デューラーとホルバインが木版画を手がけており、とくにデューラーは木版画、銅版画ともに多くの傑出した作品を残しています。

 しかし日本では、浮世絵版画は明治期には衰え、小林清親を例外として大正期の橋口五葉、竹久夢二ほか、わずかに近代的系譜を辿るにすぎません。日本の近代版画の出発は明治40年頃からの石井柏亭、山本鼎、らの創作版画運動、そして大正時代の初めに長谷川潔、恩地孝四郎、田中恭吉ら詩精神に満ちた新鮮な創作版画の登場となりました。

 そして日本の現代版画がきわめて活発となり国際的にも高い評価を確立したのは戦後のこととなります。海外の国際美術展においても油彩は印象派の亜流との評価を受けましたが棟方志功、浜口陽三等そのオリジナル性において高い評価を得て今日に至っています。

講談社「現代版画」より抜粋1979年刊行

版画の種類。

 版画の種類としては、木版画・銅版画・石版画・シルクスクリーン(セリグラフ)などがあり、これは版の材質からつけられた名前です。
そしてこの順序に、凸版・凹版・平版・孔版という版形式の4種類の代表でもあります。

 また版材については他にリノリウム・亜鉛・アルミニウム・謄写紙などさまざまな材料が用いられています。

美術を見るヒント

1.自分流に楽しむ

 「分かる」「分からない」で捉えない。ここで言う「分かる」とは誰かの説を「知っている」ということに過ぎないことが多い。またこれが「正しい」これは「間違い」ということもありません。理屈ではなく感性。「絵とは音楽と同様に感じるもの」。感性を司る右脳を鍛えることになるのです。使わなければ退化してしまいます。

2.とりあえず3分

 どちらかというと眺めることが多い美術鑑賞。まずは「よく見る」こと。美術館などでは一通り見たあと心に引っかかる、気になる作品をもう一度見る。おすすめは「3分間かけて見る」こと、また「買うつもりで見る」「細部に注目する」もよく見ることにつながります。

3.新しい価値観に気付く

篠原佳尾 銅版画集WHOINより

 鑑賞を通して、自分とは違う価値観の存在に気付き、新しい価値観を築いていける。楽しみながら人間的に成長できること。美術鑑賞はオープンエンド。最終的な正解がないものと考えていい。

コレクションの楽しみ

藤田令伊「アート鑑賞、超入門」より抜粋

 群馬県桐生市にある大川美術館。松本竣介をはじめとする野田英夫、茂田井武、難波田龍起、清水登志、長谷川利行等の作品で知られています。創設された大川栄二氏はダイエーの副社長をはじめダイエーファイナンスの社長を勤められた方。若いときから絵画が大好きで自宅の一部屋に集めた油彩作品を毎日眺め、飽きた作品を掛け替えてゆくという生活の中で画商が持ち込んだ作品が松本竣介の「ニコライ堂の横の道」。いっぺんに魅せられた氏はコレクションの内容が松本竣介を中心とした人間群の作品へと変わった。また「絵とはすべて人格で、何を書いても画家の心がでる」とも。日々飽くことなく気に入った作品を見続けること、あきのこない作品を選択することは自身の審美眼を磨くことへと昇華できるのではないでしょうか。貴重な身銭をきり気に入った作品を手元に置き、見続けることで新しい発見もあり、楽しくもあり。それがコレクションの醍醐味なのでは?

北川健次 巴里肖像